学期が終わって、英語の勉強ついでにアカデミックなアニメの見方を勉強した僕は、最近アニメが楽しくて仕方ない。大学で色々借りてみたのだが、結局、70年代から80年代にかけての日本アニメ映画として出色なのは『カリオストロの城』と『うる星やつら:ビューティフル・ドリーマー』『ナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』だという結論に落ち着きつつある。
エンターテイメントとしての基本線を守りながら、なおかつアニメ技術論的にも、「映画としても」素晴らしいという三拍子揃っているのはこの五作だ。多分それ以降の作品では『紅の豚』『攻殻機動隊』『千と千尋の神隠し』などが挙がるだろうが、それは別の機会に譲ろう。
これから時間を見つけてなんとかこの五作についてレビューを簡単に書きたいと思うが、今回はこの『カリオストロの城』。勿論この作品はルパン・ファンならずとも僕らの世代ならテレビで何度も見た(はず)のものであるが、僕は実はちゃんと通して見たのは初めてであった。というのも、最初の偽札事件のシーンで、僕はどうしてもそこにある矛盾に腹が立って見るのをやめてしまうからである。
何が矛盾かといえば、最高に良く出来た偽札は、それが次の人に受け取られる限りにおいて真札とかわらない訳で、それを偽札だと分かった瞬間に捨ててしまうなんてことがあるはずがないからである。なのにルパンはそれをあっさりと捨ててしまう。そして、捨て終わるのと同時に僕もテレビのスイッチを切ってしまう。その胡散臭い正義漢振りが、妙に僕の癪に障ったのである。
僕の様に気が短い視聴者でなくとも、このシーンに疑問を持った人は多いのではないだろうかと思う。そして、もう15分ほどその胡散臭い正義漢気取りのルパンに付き合ってみると、この物語が非常に良く出来た素晴らしい作品であることに気がつく。僕は、自分の短気でこの素晴らしい作品の真価に数十年も出会えなかったという訳だ。
技術的な話からしよう。ルパン三世のテレビシリーズにも共通して言えることだが、出てくる小道具への凝り方は最早病的なレベルだ。主人公のルパンは勿論、銭形や次元の服装、持ち物まで徹底的に凝って作ってるのは感動の一言。さらにはアニメーション技術としても、水中のルパンの描写や、有名なカーチェイスのシーンなど、時間的にも金銭的にも制約があったはずなのにここまでの作品を仕上げた宮崎の完璧主義振りには驚くばかりである。
ストーリーに目をやれば、これはラピュタと同じ冒険物語である。これ以後、宮崎が様々な形で語る物語の原型の(ほぼ)すべてがこの映画の中で出てくる。田園風景と車、湖と時計塔という、自然と文明の対比の美しさや、綺麗なお姫様(ロリータ・コンプレックス的な)と恥ずかしがり屋の主人公の淡い恋物語などは彼の作品の典型と言って良い。深く考えずにストーリーにのめり込めば、これほどの冒険活劇は他にはあるまい。宮崎が願っていた子どもの冒険への夢をかき立てる作品として、この作品は完璧である。
この映画は、良く考えると上述の偽札のエピソードのみならず、論理的矛盾を複数抱えているという意味で、疑問符を付けることもできるし、それ自体正当なことである。それはルパン三世という主人公が織りなす世界観と宮崎の描きたい世界観がぶつかった結果噴出する問題点であると思う。例えばこの偽札のシーン。これは宮崎がルパンを義賊として描こうとしているからであり、「本物」を追求する求道者としてルパンを描こうとするから起こる矛盾だ。宮崎にとって、ルパンとは、世界の「本物」「真実」を知りたいが故に冒険し、旅し、そして時に盗む人間なのである。
しかし、こうしたぶつかり合いがこの作品を希有なものとしているとも言える。これは押井守にも言えることだが、自分の好きにやれる様になって、ディープな主張を全面展開する様になった後の宮崎の作品群は、「凄い」とは思うが何か違和感を感じさせる。エンターテイメント上の制約があって、その足枷の中で自分の持てるものを出し切った作品の方がバランスが取れているのではないかと私は思う。
『カリオストロの城』は日本アニメ史のみならず、映画史にも残る(ここから始まる日本アニメ映画の隆盛を予感させるという意味で)傑作である。僕の様に、ちょっとした偏見のせいでまだ見ていない人には是非一度挑戦してもらいたい作品である。
2009年06月30日
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僕も結局宮崎だ、に賛成ですが、そうでない(それ以外のものをアニメに求める)人がいるのもまぁ理解できます。押井守の『ビューティフル・ドリーマー』と最初の『攻殻機動隊』は本当に凄いし。
でも、僕にとっては結局、宮崎ですね。僕にとってのアニメはそれでいいです。
まぁ、そうだよね。もう少しアニメは深いのかと思っていたけれど、なんかそうでもなさそうだと、ここ2、3年思っているところなんです。映画とか他ジャンルに比べて、突出した才能が少ない気がするんだよね…。
雑談でした。