さて、この映画。かつてこの映画を好きだと言っていた女友達に、「えー」と全否定してしまったことを、今ここに深く陳謝いたします。ま、その人は絶対ここを読んでいない&仮に読んだとしても僕が僕だとは分からないと思いますが。
この映画に対する僕の好意は、サガンに対する僕の愛情と、上野樹里が意外にタイプであることと、池脇のキャラ設定&女優魂に感動したことの三点に集約されている気がします。だから、もしかするとちょっと誉めすぎているかもしれない。でも、安心して見ていられて、それでいて胸がきゅーっとなる切ないラブストーリーとして高いレベルにあることは請け合いです。ラブストーリーは結ばれ、別れる必然性が曖昧だと嘘くさく見えるから、脚本が大事ですが、良く書けている。
つまぶぎ(漢字が出にくいのでご容赦)の演技力は思ったよりもまし、でもそんなに感動もしなかったけど、今時の若者の適当で自己中心的な所とか、視野が狭くて思いこみが激しい所とかは良く出ていました。ある程度彼自身の性格なのかも知れないが。
ともかく、ラブストーリーとしての出来は一級品。
いつか貴女はあの男を愛さなくなるだろう。…そしていつか僕もまた貴女を愛さなくなるだろう。我々はまたもや孤独になる。それでも同じことなのだ。其処にまた流れ去った一年の月日があるだけなのだ…
ああ、サガン良いなぁ…と、サガンを引用してもダメだろうから。もう一つだけ。
なあ…目ぇ閉じて…何が見える?そこが昔うちがおった場所や。深い深い海の底。うちからそっから泳いできたんや…あんたとこの世で一番エッチなことする為に…そこには光も音もなくて、風も吹かへんし、雨も降らへんで、シーンと静かやねん。別に寂しくはない。初めから何もないねんもん。ただゆっくりゆっくり時間が過ぎていくだけや。うちはもう二度とあの場所には戻られへんねやろ。いつかあんたがおらんようなったら、迷子の貝殻みたいに、独りぼっちで海の底をコロコロコロコロ転がり続けるようになるんやろ…でもまあそれもまた良しや。
こうして考えてみますと、よくよくこの映画は池脇の気迫で成り立っている映画ですなぁ。すごいぞ池脇千鶴!